鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

"Eat to Live" by Brian M. Sammons および "Prix Fixe" by Andrew Penn Romineの翻訳が、「ナイトランド・クォータリー vol.16」に掲載されました

 季刊のホラー小説専門誌〈Nightland Quarterly〉、その最新号の特集は「化外の科学、悪魔の発明」です。

 わかりやすく言えば、マッドサイエンティストものの特集。自分は短篇小説2本の翻訳を担当しました。

 まず片方は、「ダイエットやめますか? それとも人間やめますか?」という現代ゾンビもの。ダイエット用ナノマシンの暴走がゾンビの蔓延を招いたという設定が非常に卓抜で、文明批評がにじむあたりも実に見事です。作者のブライアン・M・サモンズ氏は『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオライターのひとりで、ゲームシナリオを破綻なくエキサイティングにこぢんまりとまとめるという訓練の繰り返しが小説創作にうまく生かされているのを感じます。

 ちなみに原題のEat to Liveというのは「食べるために生きるのではなく、生きるために食べなければならない」というソクラテスの発言とされる言葉を元にしたもので、なかなか意味深ではあるのですが、映画のB級ゾンビもの的な小説のテイストをうかがわせるタイトルのほうがよいと考え、「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」という1980年代の啓発CMのもじりにさせていただきました。

 

 もう一篇の「宇宙の片隅、天才シェフのフルコース」は、SF-TRPG『エクリプス・フェイズ』の小説アンソロジー『After the Fall』(2016年)に収録されている一篇です。

 23世紀とも言われるトランスヒューマン時代における禁断の美食は……という設定が魅力的です。細かな部分には世界設定との矛盾や粗も目につくのですが、それを補って余りある面白さがあります。

 他の皆さんの翻訳や評論もこれから読み込んで糧にさせていただきます。楽しみです!

f:id:Machikane1192:20190227103358j:plain

 

ナイトランド・クォータリーvol.16 化外の科学、悪魔の発明

ナイトランド・クォータリーvol.16 化外の科学、悪魔の発明