『エクリプス・フェイズ』小説「古椿姫」が、SF Prologue Waveに掲載されました
「SF Prologue Wave」は、日本SF作家クラブ会員有志が運営するネットマガジンです。毎月20日がリリース日で、数本のショートショートや中短篇小説が掲載になります。(岡和田晃さんの過去ツイートにもあるように)プロの小説家の作品を縦書きのPDFで読めるのが優れているところで、スマホやタブレットにダウンロードしておけば、電子書籍に類似するレイアウトや見栄えで読書ができます。そのため、ある小説家に興味を抱いてその作風が知りたいなどのケースでの試し読み媒体としても非常に有用です。また、前述のように毎月新作がリリースされるので、定期的に訪れて自分の趣味に合う書き手を探す、というような使い方にも適しているかと思います。
さて2018年2月には、以下の諸作品がリリースされました。
【中・短編】
・「マイ・デリバラー(29)」山口優
・「ゾンビの中のゾンビ」片理誠(作・絵)
【九十九神曼陀羅企画】
・シリーズ新作(「百夜・百鬼夜行帖70 還ってきた男・下」平谷美樹)の案内
【Eclipse Phase企画】
・「古椿姫」待兼音二郎
・『月刊アナログゲーム情報書籍「Role & Roll」Vol.160「『エクリプス・フェイズ』入門シナリオ スペース闇金道――情報難民をさいなむドラッグ」』
自分も知的興奮に包まれながら、各作を拝読しました。
木本雅彦さんの「ケントのマカトン」は、マカトンという手話を簡略化したようなコミュニケーション手段を通じて支援学校の児童と意思疎通を図ろうとする教育者による一人称視点でのショートショート。相手が伝えようとしたことがうまく読み取れないことが陰翳や余韻をもたらしており、一人称の語りがその効果を高めるために効果的だと感心しました。
山口優さんの「マイ・デリバラー」は、シリーズ作品の第29回です。キビキビした硬質な文体と、戦闘ヒロイン・ロリロや留卯などのキャラクターの描き分けが彩り豊かなところがやはりプロの手腕だな、と拝読しました。
片理誠さんの「ゾンビの中のゾンビ」は、ディストピアと化した東京で「楽園」のような地区への居住資格を得るための面接試験を扱った短篇小説。謎の監督官と「俺」がロールシャッハ・テストをめぐって交わすちぐはぐなやり取りに掛け合いの面白さがあり、やはりプロはこういうところが巧みだなあと舌を巻いた次第。最後のどんでん返しも小気味よいです。
「九十九神曼荼羅シリーズ」は、創作集団NEOによる電子書籍のための書き下ろし企画に連なる新作。「小学館eBooks」からさまざまな電子書籍ストアに配信されるもので、短篇のバラ売り、カラーイラストのふんだんな使用など、電子ならではの売り方で興味深いです。平谷美樹さんによる「百夜・百鬼夜行帖70 還ってきた男・下」が、魅力的な表紙画像とともに紹介されています。
待兼音二郎「古椿姫」は、SF−TRPG『エクリプス・フェイズ』(EP)シェアードワールド小説として書き下ろしたもの。今回ゲスト枠でご掲載いただきました。原稿用紙60枚を超え、PDFでサクッと読みたいというニーズに対しては長すぎますし、『椿姫』や『人魚姫』の設定についてのだらだらと説明的な箇所、そして人物の描き分けなど、素人くさい部分も多々あるかと思いますが、まずは恥をかいて至らぬ部分を思い知ることで書き手としての実力を上げていこうという考えで、いずれまた、次回作も書いてみたいと思います。
そしてまた、Role&Roll Vol.160向けに自分が書いたEPシナリオ「スペース闇金道」について、岡和田晃さんが紹介文を寄せてくださっています。いつも恐縮です。ありがとうございます。
ちなみに「SF Prologue Wave」ではショートショートが目玉コンテンツのようになっていて、サクッと読めるという点からも、やはりショートショートが媒体に適しているように思います。今回、山野浩一さんの「四百字のX」シリーズに連なる「箱の中のX」、「X塔」、「同窓会X」。そして平田真夫による「都市伝説X」、岡和田晃さんの「X橋」を続けて拝読しましたが、何やら連歌のセッションの場に居合わせたような知的興奮を覚えました。
以上、長くなりましたが掲載報告でした〜。
- 作者: ロブ・ボイル,朱鷺田祐介,岡和田晃,待兼音二郎,エクリプス・フェイズ翻訳チーム
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2016/06/30
- メディア: 大型本
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