鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典第47回「中世の焦土作戦? ビザンツ帝国のゲリラ持久戦略」が、Role&Roll Vol.169に掲載されています

 フィクションの鏡を踏み跨ぎ、現実中世の世相風俗を紹介する隔月連載。その第47回は自分の筆で、ビザンツ(東ローマ)帝国が主に東方で国土防衛のために採用したゲリラ持久戦略を紹介しています。

 軍勢の動員と維持のコストはつねに為政者を悩ませるものであり、とりわけ辺境地帯をいかに外敵から守りぬくかというのは大きな課題です。平時には耕作をさせて有事には軍役に就かせる屯田兵の制度はそのひとつの解であり、現地司令官に大きな権限を与えて即応力を高めるのもひとつのやり方です。さらには国境地帯を無人化して敵の兵站を脆弱にさせるというのも、山がちな地域では大いに有効な策です。

 それらの歯車がうまく回っていた8〜9世紀を中心に、テマ(軍管区)制度や対イスラームのゲリラ戦略について綴っております。また、故地がイスラーム圏内となったキリスト教徒のアルメニア人の移住と活躍も取り上げています。

 今回も見田航介さんのイラストに大いに助けていただきました。アルメニア人皇帝のバシレイオス1世とレオーン3世の肖像イラストがあるのですが、目を惹くのは両者のふてぶてしさというか、悪人面といってもよいほどの存在感です。見田さんの悪人面といえばキリスト教の異端カタリ派を取り上げたこの連載の第16回(2013年のRole&Roll Vol.107掲載ですから5年ほど前になります。ちなみに岡和田晃さんの筆です)のイラストにも匂うほどの存在感がありました。見田さんにはこの画力を生かしてぜひ、ピカレスク漫画を描いていただきたい、それを読みたいと思いました。

エクリプス・フェイズ 入門シナリオ&運用ガイド「最後の夢と悪夢の酒」がRole&Roll Vol.169に掲載されました

R&R最新号のエクリプス・フェイズ記事は朱鷺田祐介さんの筆で表題のシナリオです。

舞台は土星を周回するスカム・バージの「フェランズ・リコース」。そして「ペタル」という植物の花弁のようなかたちをした一種のナノドラッグの謎が提示されます。世界一まずいビール「フェランズ・ダー」と太陽系一うまいウィスキー「フェランズ・マー」という未訳サプリ『Rimward』の公式設定がいかにも朱鷺田さんらしいコミカルなかたちでシナリオに組み込まれていて、彼の前作「ヴァイキング・マーダーズまたは、火星八つ墓村」に登場した和服の美女・山副多賀子の意外なかたちで再登場します。

などなどの要素がぎゅっと詰め込まれた魅力的なシナリオです。「フェランズ・リコース」の公式設定の抄訳もついています。

「ミスター30% 長期運用成績トップのヘッジファンドを率いる男」という記事が掲載されました

こちら、投資関係の専門的な記述の並ぶ記事で、いったん四苦八苦して全体を訳したものの、その後、編集の方と意見を出しあい、一般読者にも理解しやすいように抄訳にまとめ直す運びになり、このたびようやく日の目を見ました。

それでも固い記事ではありますが、よろしければご一読ください。

ミスター30% 長期運用成績トップのヘッジファンドを率いる男

スティーヴ・ラスニック・テムの短篇「空腹」の拙訳が、『ナイトランド・クォータリー Vol.14』に掲載されました

 拒食と過食は紙一重であり、「私のなかにブタがいる」という恐怖感がその裏にあります。

『ナイトランド・クォータリー Vol.14』の特集は「怪物聚合(モンスター・コレクション)」。その一篇として、表題の短篇が掲載されています。

“Hungry”by Steve Rasnic Tem.──1992年に発表された短篇の全訳で、いかにもテムらしく女性の家族愛をしっとりと描きながらも「奇妙な味」というべきどんでん返しのある作品です。

ナイトランド・クォータリーvol.14 怪物聚合〜モンスターコレクション

ナイトランド・クォータリーvol.14 怪物聚合〜モンスターコレクション

カリブ海の島国の市民権販売ビジネス、およびダイソンの電気自動車参入についての翻訳記事が、GQ Japan 2018年10月号に掲載されています

「パスポート売ります!──市民権販売ビジネスの背後にあるものとは」
 これが最初の記事。成長期の80年代にエチオピアの飢餓の報道に触れて国籍の不平等に疑問を抱いたスイス人少年が、長じて市民権販売ビジネスの商人となり、闇の領域に呑みこまれていくというストーリーです。

「電化製品の王者、電気自動車ビジネスに参入! ダイソンの壮大な2020年構想」
 こちらはジェームズ・ダイソンイーロン・マスクの対比が小気味よい記事です。

GQ JAPAN(ジーキュージャパン) 2018年10月号

GQ JAPAN(ジーキュージャパン) 2018年10月号

コマンド・マガジン142号に、「日本の降伏」というヒストリカルノートの翻訳が掲載されています

CMJ 142号の附録ゲームは「嵐の8月 満州1945」。ソビエト連邦による満州樺太、千島列島への武力侵攻を扱ったもので、もしも日本政府がポツダム宣言を受諾せずに戦争が長引いていれば……という歴史のifを含んだものとなっています。

ポツダム宣言の受諾決定に至るまでの混乱や紛糾については半藤一利著『日本のいちばん長い日』にありありと描きだされているもので、1967年と2015年の映画版をそれぞれご覧になった方も多いかと思います。

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同書とほぼ重なる内容でありながら、アメリカ人の視点で記述されているところが意義深い「日本の降伏──玉音放送までのいちばん長い24時間」というヒストリカルノートの拙訳が同誌に掲載されております。

玉音放送の原稿である「終戦詔書」の英訳が原文にあり、その現代日本語訳も自分が手がけました。ウォーゲーマーの知的水準はきわめて高く、国会図書館サイトからオンラインで読める原文そのままの掲載でも差し支えないのではと当初は考えたのですが、文語体であり、さすがにそのままで全文を読破するのは難しいと考えて、漢字とカナ交じりという体裁はそのまま生かし、難解な言い回しの部分のみを現代文章語に置き換えて現代語訳といたしました。

ところでウォーゲームとは司令官のジレンマを追体験できる媒体であり、敵勢の内情について、書物では得られない洞察を与えてくれるものでもあります。そこで、北朝鮮をめぐる最新のウォーゲームがあればぜひやってみたいと思います。Korea1995/2005というのはコマンドマガジンのバックナンバーにあるのですが、Korea2020といったものが待ち望まれますね。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

エクリプス・フェイズ入門シナリオ&運用ガイド「ヴァイキング・マーダーズ、または火星八つ墓村」が、Role&Roll Vol.167に掲載されています

 続けてEPシナリオの紹介です。今回は朱鷺田祐介さんの筆で、「火星八つ墓村」! という残暑厳しい中のホラープレイに最適です。
 横溝正史の原作もそうですが、何より1977年の角川映画で有名なあの「八つ墓村」をEPシステムに落とし込んでプレイアブルなシナリオに仕立てる朱鷺田さんの手腕に惚れ惚れするばかりです。

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 マルマル牙突丸さんのツイートもぜひご覧ください。

Role&Roll Vol.167

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