戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典第19回が、Role&Roll Vol.113に掲載されました
フィクションの鏡を踏み跨ぎ、現実中世の世相風俗を紹介する連載の第19回が掲載されました。今回は自分の執筆で、西洋中世の入浴習慣を紹介しています。
一日の仕事を終えて風呂に浸かるのは至福の一時で、風呂がない生活は現代の日本人にはおよそ考えられません。しかし日本でも内風呂が当たり前になってからまだ40年にはならないわけで、毎日必ず入浴するのが当たり前になったのもそれからのことです。
海外旅行先でシャワーから水しか出なかったなど、現代においてもカルチャーギャップを体験する機会には事欠きませんが、歴史を遡れば、入浴が害悪と見なされていた時代もありました。そして入浴の効用が再認識されてからも、たとえば19世紀イギリスの文豪ディケンズは自宅に冷水浴の設備を設けたことを自慢していたなど、現代の我々には信じがたい事実もあります。熱帯地方ならともかく、イギリスの気候で冷水浴をすることによく耐えられたものだと感心してしまいます。
黒澤映画は時代考証の正確さで有名ですが、江戸期の既婚女性やそれ以前の上流階級の女性がしていたお歯黒は意図的に省かれています。そのように、歴史上の一時代を描く場合にも現代の価値観をそこに投影することは当然ですが、お歯黒を美しいと感じる文化がかつてあったということも、現代人には興味深いことでもあります。
それと同じく、入浴を忌避する文化がなぜ、どのような背景で存在したのかということも、興味深いことです。
歴史を勉強していてつくづく感じるのですが、現代の我々の入浴習慣も、千年後の人類にはお歯黒のような奇妙な習慣と認識される可能性は少なからずあると思います。たとえば我々は入浴に毎日およそ30分ほどを費やしていますが、それは積もり積もればぼうだいな時間の無駄ですし、水資源の浪費でもあります。
それはともかく、今回も本文の拙さを見田航介さんのイラストに助けていただきました。いつも見田さんには感謝してもしきれません。
また、毎回文字数制限がきつい中で感じるのですが、同じ条件でも岡和田晃さんがたっぷりと、窮屈さを感じさせずに書かれているのと比べると、書き手の実力というのは本当に大きいですね。
- 作者: アークライト
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2014/02/08
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログ (5件) を見る