Role&Roll誌81号に、戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典第三回が掲載されました
フィクションはすばらしい。監禁され死にかけた憂国の士の叫びがギリギリの段階で英雄たちに届くのも、現実の歴史で発生した重大な事故や裏切りが登場人物の活躍で回避されるのもフィクションの力です。フィクションは、ままならぬ現世を生き抜くための活力源だと思います。
しかし、フィクションには作者による改変がさりげなく織り込まれるため、そこで描かれる過去のどこまでが史実で、どこからが改変であるかが見分け難いということも言えます。たとえば、黒澤映画の時代考証には瞠目すべきものがありますが、前近代の既婚女性がしていたはずのお歯黒は、さりげなく無視されています。現代人の美意識との兼ね合いでしょうが、歌舞伎の女形が演じる年増がお歯黒をしていることとは対照的です。
前置きが長くなりましたが、この連載は、「フィクションの鏡を踏みまたぎ、現実中世の実像を描く」ことをコンセプトにしています。TRPGのシナリオ自作やフィクション創作に取り組む際に、フィクション作品は大いに参考になるのですが、前述のような作者による改変部分を見分けるのが悩ましい点です。また、既存のファンタジー関係の事典類でも、魔法などのフィクション部分が現実の歴史上に存在したものと区別なく記載されてため、同様の悩ましさが発生します。そこでこの連載では、あえてフィクション要素を廃することで、創作者に役立ててもらおうと考えております。それが、「“非”幻想事典」というタイトルの由来です。
- 出版社/メーカー: 新紀元社
- 発売日: 2011/06/10
- メディア: 大型本
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連載第三回の今回は、「中世都市」について書かせていただきました。
本文より、ぶっちゃけ見田航介さんのイラストの方がお勧めです。「拡張する中世都市の例」は、大いに参考になることと思います。また、この隔月連載の本文執筆は岡和田晃さんと自分(待兼音二郎)が一回交代で担当しているのですが、自分の持ちキャラの女司祭アメリアと蛮人オドアケルのイラストも書き直していただき、前回よりもさらに魅力的なものとなりました。
また、この連載には戦鎚傭兵団メンバーも大いに力になってくれています。タイトルに「戦鎚傭兵団」がついているのもそれゆえです。
最後に、連載第三回の参考書籍をざっと挙げておきますね。
- 東京書籍「図説都市の歴史」シリーズ(1991-93年)
- グラフィック社「ヨーロッパの集落デザイン」シリーズ(1992-93年)
- 『中世への旅 都市と庶民』
- 『ローマ帝国はなぜ滅んだか』
- 『中世ヨーロッパの都市世界』
- 『中世ヨーロッパの農村生活』
- 『中世ヨーロッパ都市の生活』
- 『中世都市と暴力』
- 『中世ヨーロッパを生きる』
- 『中世ヨーロッパの農村社会』
- 『中世の旅』