鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

SFセミナー2011に行ってきました

 5/3〜4に東京で開催されたSFセミナー2011に泊まり込みで行ってきました。
 昼間は大ホールでの講演やパネル、夜は旅館でその続き+αを各部屋で語り合うというイベントでして、自分は初参加でしたがたいへん勉強になりました。特に夜企画は大学教授からSF作家、翻訳者、編集者、コアなSFファンに至るまでの参加者が車座になって酒を片手にざっくばらんに語るというもので、皆さんの発言から自分も大いに刺激を受けました。

 若島正さんのジーン・ウルフ講義では、開口一番の「ロリータの冒頭が名文だ、なんて言う奴は信用しない」からがつんとやられ(そういう奴に限って評価の基準が他人の受け売りなのだそうです)、本の読み方というものを再考させられました。夜の部では「実はディケンズがいちばん好き」という若島さんの本音(??)をすぐ近くで聞くことができ、その他諸々の談論も含めてたいへん有意義な時を過ごすことができました。
 岡部いさく堺三保の両氏による「ミリタリーSFの現在」では、宇宙軍艦の名称がイラストリアスフューリアスなど英国海軍風になっているというシリーズの紹介もあり、まさしく自分を含めたミリタリーマニアにとってツボだなあと思いました。ターゲット層にとっての満足感が約束されたジャンル小説こそが小説市場の厚みを支えるものだ、というのが自分の持論です。
 また、夜の部に増田まもる/高槻真樹/横道仁志の各氏を中心に行われた「SFは現実の底を抜く」という座談会は、コップ酒片手の車座という場の雰囲気も手伝って、たいへんな盛り上がりでした。思考実験の場としてのSFのすばらしさを再認識することができました。

 加えて、夜の部には「新世紀のポストヒューマンRPG『エクリプス・フェイズ』を語ろう」という企画が、岡和田晃/蔵原大/齋藤路恵の各氏によって行われ、自分も末席でお手伝いをしたのですが、予想を上回る20名あまりの参加者を集め、配付資料のコピーが足りなくなるという一幕もありました。人間の精神がデータ化され、生殖の必要がなくなった近未来において、「男であること/女であること」はどんな意味を持つのかという問いかけに、色々と考えさせられました。
 その後、『エクリプス・フェイズ』の体験セッションが行われました。プレイヤーはスタッフを含めて確か7名で、自分もこのゲームは初体験でしたが、基本システムを簡略にする代わりに技能を細分化することでキャラクターを描き分けていること(と思ったのですが、勘違いでしたらすいません)などを、身をもって知ることができました。

 この体験セッションにあたって、QuickStart-Ruleのキャラクターシート2枚と、巻末のルール早わかり表を翻訳したのですが、参加者の大半には英語版のキャラシーを使わせる結果となり、また、訳した本人である自分が訳語をあまり憶えていなかったため、英語の技能名がずらずら並んだキャラシーを前に皆さんを戸惑わせてしまい、申し訳ありませんでした。次の機会がありましたら、もっと準備を入念にしたいと思います。

 『エクリプス・フェイズ』紹介パネルについては、Analog Game Studiesのサイトに詳しい報告がありますので、よろしければそちらも併せてご覧ください。