戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典第23回がRole&Roll Vol.121に掲載されました
今回は自分の担当で、「タタールのくびき――異民族支配下で諸侯が得た漁夫の利」という題です。
チンギス・カーンの孫バトゥが、カスピ海に注ぐヴォルガ河の河口近くのサライを本営にキプチャク汗国を建てた1243年から約240年、日本の江戸時代にも匹敵する長きにわたってロシアはモンゴルの支配下に置かれました。
いまの日本の生活様式や文化には室町時代や江戸時代に由来する要素が数多くあり、その期間の大半を異民族に支配されていたとしたら、日本はまったく違う国になっていたであろうことが想像されます。
それが現実に起きたのがロシアです。モンゴルの蹂躙で居住地の59%が消滅したそうですが、地域によっては消滅率は85%にもなったのだとか。先の大戦末期に「米軍がやってきたら男は皆殺しに、女は皆慰み者にされる」とのデマが流布しましたが、それに近いことが現実に起きたようなものです。
モンゴルによるロシア支配、いわゆる「タタールのくびき」によって、ロシアは歴史から取り残されました。1243年といえば、「都市の空気は自由にする」という言葉に象徴されるように西欧で都市が大いに発達したころ(100年くらいすると黒死病がやってきますが)ですが、西欧と大差ないレベルにあったロシアもモンゴル支配によって都市や民衆の力が大いに削がれ、その影響は現在まで続いています。
しかし反対に、諸侯にとっては「超強いけど放置プレイ」な支配民族の虎の威を借りられるという漁夫の利も生じました。人頭税の徴税を代行することで、民衆から余分にとった税金で私腹を肥やすことができたのです。その代表者がアレクサンドル・ネフスキーです。それがモスクワ大公国の隆盛やツァーリによる専制支配につながっていきます。
と、そのような記述でスペースを一杯一杯に使ってしまい、軍事面への言及はすべて見田航介さんのイラストにおまかせしました。馬鎧にいたるまで詳しく描き込まれたイラストですので、資料的な価値も高く、ぜひご覧ください。
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