鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

電子書籍取次メディアドゥについての記事がダイヤモンド・オンラインに掲載されました

 日本の出版業界をくくる二大キーワードが「再販制度」と「委託販売制度」です。前者は定価販売を義務づけるもの。そして後者は、売れ残りを返本できることから書店が在庫リスクを負うことなく多彩なタイトルを店頭に揃えることを可能にするもの。その委託販売制度を支えてきたのが、“取次”と呼ばれる流通業者です。

 日本で書籍の売上げがピークだったのが1996年です。その前後の最盛期、書店数は全国で2万店を超えていました(現在では1万5000店ほど)。いっぽう出版社の数も、最盛期には4500社を超えていました(現在では3700社ほど)。書店・出版社とも零細業者が大半を占めるなかで、個々の出版社や書店が独自に取り引きをしようとしてもリーチできる範囲には限界があります。そんな両者の橋渡しをして、弱小出版社までも含めた新刊をごっそりとかき集め、全国津々浦々の書店に送りとどけてきたのが日販やトーハンなどの取次業者です。どの書店にもある程度充実した品揃えがあることの裏側には、取次の活躍があったわけです。

 これが電子書籍ではどうなるか? まず再販制度のほうですが、電子書籍は「物」ではなく情報なので同制度は適用されないとの見解がすでに公正取引委員会から示されています。よって、海外の0.99ドル電子本に見られるような価格競争が、いずれ日本でも起きることでしょう。すでに佐藤秀峰氏の『ブラックジャックによろしく』など全巻無料のコミックスもいろいろありますし。

 次に委託販売制度ですが、出版社はともかくとして、書店にあたる電子書籍ストアの数が桁違いに少なくなるのは自明です。おまけに、紙の本とは違って物理的な配送も必要ありません。だから電子書籍には取次は必要ないものだと、ずっと自分も思い込んでいました。

 ところが、実際にはそうではないのです。電子書店とひと言でいっても、AmazonKindleストアのように既存の大手が電子書籍に乗りだした例もあれば、コンテンツプロバイダがメニューのひとつとして電子書籍を取り扱うようになる例もあります。とくに後者の場合には、数百もの出版社からひっきりなしに出される新刊を少人数で取り扱うことが多く、ならば専門の業者に任せたほうが効率的という話になるのです。

「着うた」などの音楽ビジネスで培ったストア運営のノウハウや顧客網を元に電子取次業務に参入し、LINEマンガのコンテンツ供給を一手に引き受けるなどの活躍をしているのが株式会社メディアドゥです。同社サービスを紹介する記事が、ダイヤモンド・オンラインに掲載されました。

 いつもながら文字数制限との戦いで、何度も改稿を経ることになりました。最終的にご発言を削ることになってしまいましたが、メディアドゥ社執行役員/経営企画室長の山本治さんには取材からその後のやり取りを含めてたいへんお世話になりました。ここに改めて感謝を示したいと思います。

電子書籍時代を支える、知られざるコンテンツ取次メディアドゥが見いだした出版業界の”スキマ”