鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

トーキングヘッズ叢書No.68「聖なる幻想のエロス」が発売になりました

ページを開けば立ち昇るインクの匂い、巻頭カラーの美しい発色……薄っぺらいネット記事が氾濫するいま、秋の夜長に紙の雑誌を読む贅沢は何ものにも替えがたいものです。

トーキングヘッズ叢書最新刊のテーマは「聖なる幻想のエロス」。戦争とエロティシズム、宗教とエロティシズムなど、なるほど、そんな切り口もありえるのかという興味深い記事が並んでいます。

自分もひとつ書こうと思ったのですが、構想がまとまりきれずに断念しました。この号に掲載されている皆さんの記事を参考に、土木現場の片隅でユンボの音を聞きながらイマジネーションを高めていければと考えています。

さて今号には岡和田晃さんの「ロック・ミュージックとRPG文化(その3)Nightfall in Middle-Earthとゲーム・ナラティヴ」をはじめ、書評の数々も掲載されています。

田島淳さんの『薔薇の回廊』(アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ)、『愛の完成・静かなヴェロニカの誘惑』(ロベルト・ムージル)評にくわえて、岡和田晃さんの『一万一千本の鞭』(ギョーム・アポリネール)、『ポール・デルヴォーの絵の中の物語』(ミシェル・ビュトール)、『女哲学者テレーズ』(作者不詳)、『ペピの体験』(作者不詳)評など盛りだくさんです。

自分は『少将滋幹の母』(谷崎潤一郎)の書評を担当しました。これ、表面的には王朝物語の世界を舞台にした母子再会記なのですが、その裏にはスカトロジーや死姦すれすれの危うい記述もあるのですよ。

この作品については、シミルボンにももう少し長いコラムを書きましたので、よろしければそちらもご覧ください。
天女の汚穢と不浄観、醜怪の極みを観じてもなお切実な男のエロス