鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

イーロン・マスクについての記事がGQ Japanに掲載されています

 GQ Japan2016年1月号は、MEN OF THE YEAR 2015の特集号です。
 授賞式のようすはテレビのニュースでも取り上げられましたから、ご覧になった方もおられるのでは?
 受賞者の皆さんそれぞれがカバーストーリー的に紹介されていますが、「五郎丸歩が現れると涼風が吹いた」という書き出しや、95年に日本人男子として62年ぶりにウィンブルドンでベスト8に進出した松岡修造さんの「錦織圭選手や伊達さんのような持って生まれた才能はなかった。それを努力する才能や忍耐する才能でカバーしてきた。でも、みんなを楽しませたり、元気づけたりすることは子どものころから好きだったし、自分で言うのもなんですが、その才能はあったんです」という発言など、各人のストーリーが各様に含蓄が深く、必読です。

 そして裏特集が、「麺 of the Year 2015」(笑)。
 タイトルはだじゃれっぽいですが、冗談企画でもなんでもなく、麺という広いくくりのなかでの焦点の当て方がユニークな企画です。
 麺というとなぜかラーメンはラーメン、そばはそばと別々に扱われることが多いように思いますが、パスタやうどんも含めたあらゆる麺を、食通の第一人者たちが紹介してくれています。パリのラーメン店を紹介するコーナーもあって、あちらでは麺をすする人がいなくて会話を楽しみながら食べる習慣があるので日本と同じ麺ではのびてしまうという点など、なるほどと思いました。
 以前の号の特集で東京と金沢と福岡の寿司の名店を紹介するものがありましたが、こうした一風変わった切り口のグルメ特集がGQ Japanの新たな持ち味になりつつある気がします。

 さらに内田樹氏の「沖縄は住民運動で独立できるか?」など、硬派な読み物の記事も充実しているのがこの雑誌の特徴です。そういえば前の号と前の前の号で為末大さんがパラリンピックについての有意義な提言をなさっていて、非常に読み応えがありました。

 さて自分は、イーロン・マスクについての翻訳記事を担当しました。
 元記事が女性誌のVogueのものとあって、最初の妻や現在の妻など「オンナから見た彼」という感じの記述が多く、それが情報としても既存の評伝や記事とかぶっておらずユニークだったので、そのあたりに大きな紙幅をとりました。
 ちなみに言い得て妙だなと思ったのが、Future Perfectという原題です。
 これって、英文法の「未来完了時制」のことなんですね。
「Men will have reached Mars in 10 years.(10年後には人類は火星に進出しているだろう)」といった表現のことです。
 未来時制というのはこれから先のことを語るものですから、どれだけ自信たっぷりに語られていても、どう転ぶかわからない不確実性がどうしてもついて回るわけなのですが、世界でただひとり、イーロン・マスクが語る場合だけはそうではなく、我々は安心してその未来展望に身をゆだねることができる、というニュアンスが漂っていて、なるほど言い得て妙なタイトルだな、と感心したものなのでした。