鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

ATOKの差別語無変換はいかがなものか

ATOK定額制サービスというのが昨年9月に始まりまして、月額300円で複数のコンピューターで使える上に辞書データなどのアップデートも受けられるというそれはもう素晴らしいことでしたので飛びついたわけです。日々大変有り難く使わせていただいておるわけですが、ひとつ重大な不満点が。

それは差別語の扱いです。ウォーハンマーの暝く残酷な世界を冒険するうえで差別的な表現は避けて通れないのでありますが、大ATOKさまはそれらの言葉を打ちこんでもなかったことになさるのです。身体障害や人為的な身分差別に基づく侮蔑表現をおもしろ半分に多用することはむろんけしからぬ事ではありますが、「盲滅法」のように派生用法として広く定着したものまで頑なに否定するのはいかがなものかと。ポップアップで漢字の使い分けなどを表示する機能があるのですから、それを使って【差別語注意】などと注意をうながせばよいと思うのですが……。

尊敬する翻訳家の方がこんなことを仰っていました。「差別そのものを無くしもせずに、言葉を否定して差別をなかったようにするのは本末転倒だ」その通りだと思います。

ATOKといえばもうひとつ気になるのは、辞書ソフトの囲い込み戦略です。具体的に言うと、「角川類語新辞典 for ATOK」というものでして、これはATOKがないと使えません。ならばEP-WING版を買えばいいだろとなるのですが、現在この類語辞典ATOK版しかないのです(かなり昔にはEP-WING版もあったようです)。どうせ裏技でEP-WING化できるのだろうと思って2008年頭くらいに買ったのですが、できませんでした(自業自得)。ATOKの月額版を導入してようやくこの辞書が使えるようになった次第です。

日本語の類語辞典というのはあるようでないものでして、パソコンにインストールして使えるものは、上記以外には「日本語大シソーラス」くらいしか知りません。国語辞典のようにいくらでも選択肢があるものならATOK専用版があってもよいと思いますが、数少ないCD-ROM類語辞典ATOKユーザー以外にも使えるようにしてもらいたかったです。

と、なんだかATOKの悪口ばかりになってしまいましたが、それ以外の点ではすばらしいです。特に、変換モードを「一般」以外にも、地方毎の「話し言葉」と「文語」に設定できるのは素晴らしい限りです。

名古屋弁で「コメダ行こみゃー」(コメダコーヒーに行こうよ)と打つときちんと変換されますし、古文の「遊びをせむとて生まれけむ」もばっちり変換してくれます。

マイクロソフトの日本語入力システムがどれだけ進歩しても、方言や古語まではカバーしてくれないと思うので、この点では自分はジャストシステムを大いに尊敬しております。ただ、差別語をなかったことにするのと、辞書の囲い込みだけはいかがなものかと思ったわけです。