鞭打苦行のThrasher

翻訳者/ライター/最底辺労働者、待兼音二郎のブログであります

エクリプス・フェイズ入門シナリオ「オールト雲の彼方へ」がRole&Roll Vol.173に掲載されました

 R&R最新号のエクリプス・フェイズ記事は朱鷺田祐介さんの筆で表題のシナリオです。

 海王星トロヤ群(海王星軌道上を60°先行するL4ラグランジュ点にある小惑星群)から太陽系のはるかな外縁部、オールト雲に飛ばされ、はたしてそこから帰還できるのか?といういかにも朱鷺田さんらしいスケールの大きな宇宙船もののシナリオで、シナリオ作成に取り組むGMにとって、そしてPCの生かしどころを学びたいプレイヤーにとっても、多くの示唆に富んでいる作品です。

 オールト雲のハビタットとして示されているのは、「ウィズダム」(2500AU)、「ザ・ネスト」(3000AU)、「ティコ・ブラーエ」(8000AU)。AUとは天文単位のことで、太陽から地球までの平均距離が1AUですから、どれほど遠い領域なのかがわかります。木星が5.2AU、土星が9.5AU、海王星が30AU、エリスでも68AUですから、まったくもって桁違いの遠さです。内惑星圏が首都圏、外惑星圏が西湘や伊豆くらいだと考えても、海王星が大磯と考えてその100倍、8000kmということは、インド洋のオーストラリアとマダガスカル島の中間海域くらい、あるいはもっと遠くということですから、気が遠くなりますね。

 

Role&Roll Vol.173

Role&Roll Vol.173

 

 

「うたかたの夢のバブルがはじけたら──死にゆく魂が迷い込む夢幻郷について」という記事が、トーキングヘッズ叢書 No.77に掲載されています

TH叢書No.77の特集は「夢魔~闇の世界からの呼び声」です。発売からしばらく経ちましたが、夢魔や悪魔について、色々な切り口の記事や書評が並んでいて勉強になります。

自分は表題の記事を寄稿しております。

アンブローズ・ビアス著「アウルクリーク橋の出来事」(絞首刑を描いた短篇小説)⇒スローモーション⇒サム・ペキンパー監督⇒代表作の『ワイルドバンチ』(舞台は1913年メキシコ。まさにその年、ビアスが消息を絶った国)⇒映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン3』

というつながりですが、詰め込み過ぎで苦しいですが、皆さんの記事を参考にして今後に生かしていければと思うばかりです。

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自分の記事では、以下の作品を列挙順に紹介させていただきました。

www.youtube.com

 

夢魔〜闇の世界からの呼び声 (トーキングヘッズ叢書 No.77)

夢魔〜闇の世界からの呼び声 (トーキングヘッズ叢書 No.77)

 

 

 

「高級時計窃盗団はなぜつかまったか?」ほか一篇が、GQ Japan 2019年3月号に掲載されています

 アメリカは連邦制国家であり、各州機関の上に連邦機関が存在します。日本に当てはめて大げさに言えば、明治維新以前の幕藩体制が続いているようなものです。

 そのため法執行機関にもニューヨーク市警やロサンゼルス郡保安官事務所など地域ごとの機関の上に、FBIという連邦法執行機関があるという二重構造になっています。日本の場合、警察庁は単なる中央官庁のひとつで、実行部隊を有してはいないですよね?(もしかして違っていたらすいません)

 FBIは日本でも知らぬ人がないくらいに有名ですが、もうひとつ、ATF(《Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives》アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)というものがあります。その特別捜査官がLA地区で事件をくり返す高級時計窃盗団を追いつめ、首領以下を逮捕するという顛末を描いた記事の和訳が掲載されています。

 文字数の制約が悩みの種でして、かなりを割愛しなければならないのが悔やまれますが、たいへん読み応えのある記事でした。

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 もう一本、「後世に残すべき人類の記録貯蔵庫」という翻訳記事も掲載されています。現在のデジタル媒体は便利ですが、記録手段としては脆弱でもあり、何らかの理由で我々の時代の記録がごっそり失われしまう可能性もあります。それに備えて、はるか昔のシュメール人のように陶板に記録を残すというプロジェクトについての記事です。

 今号のGQの特集は音楽生活で、じっくり読むのも楽しみです!

 またちなみに、連邦捜査機関のATFについて深く知りたい人には、デンゼル・ワシントン主演の『デジャヴ』(2006年)という映画がオススメです。

youtu.be

 

 

エクリプス・フェイズ入門シナリオ&運用ガイド「宇宙アリーナ:血肉の美食」が、Role&Roll Vol.172に掲載されています

 R&R最新号のEclipse-Phase記事は自分の筆で、表題のシナリオが掲載されています。

 キワモノではないまっとうなSFシナリオを作ろうと試行錯誤しましたが、年末にからんでスケジュールがぎりぎりになり、翻訳チームと編集部にお手数とご迷惑をおかけしました。

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Role&Roll Vol.172 エクリプス・フェイズ記事

 今回のイメージソースは映画『アリーナ』。1990年の古い作品ですが、宇宙闘技場の異種格闘技戦ということで、クリーチャーの造形などが素敵な作品です。

youtu.be

 

戦鎚傭兵団の中世“非”幻想事典 第四十八回「中世のギルド~盗賊/冒険者ギルドの原型」が、Role&Roll Vol.171に掲載されています

 フィクションの鏡を踏み跨ぎ、現実中世の世相風俗を紹介する隔月連載。その第四十八回は岡和田晃さんの筆で、中世のギルドを扱っています。

 さてギルドといえば、「盗賊ギルドや冒険者ギルドはあったの?」というのが、我々ゲーマーなら誰もが一度は抱く疑問です。それを巧みに引きとして生かし、記述自体は学術的なハードな内容が多いのですが、最後まで一気に読ませる校正の妙と筆力がさすがは岡和田さんだと思わざるを得ません。

 そしてまた、見田航介さんのイラストの吸引力も今回は段違い! 画像を用意しましたので、ぜひご覧ください。

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Role&Roll Vol.171

Role&Roll Vol.171

 

 

エクリプス・フェイズ 入門シナリオ&運用ガイド「ケレスの宇宙マグロ」が、Role&Roll Vol.171に掲載されています

 最底辺労働者はドツボにハマっておりまして、報告が遅れて申し訳ありません。

 さて朱鷺田祐介さんの筆による表題のEPシナリオがR&R最新号に掲載されております。

 宇宙マグロに知性化シャチ、宇宙カジキマグロ、知性化タコヤクザなど、朱鷺田さんテイスト横溢の好シナリオで、こんな作品が生み出せる才能に嫉妬するばかりです。

 小惑星帯のケレスのぶ厚い氷層の下には凍っていない海があり、EP世界の太陽系では貴重な海として資源採掘や海洋農業などが行われています。未訳サプリメント『Rimward』から、そのあたりの設定情報も抄訳されています。

https://twitter.com/orionaveugle/status/1076696483531911168

 記事画像代わりに、岡和田晃さんのtwitterポストを埋め込ませていただきました。

Role&Roll Vol.171

Role&Roll Vol.171

 

 

ピート・ローリック「海星作戦1962」の拙訳が、『ナイトランド・クォータリー Vol.15』に掲載されました

 ホラー専門誌『Night Lang Quarterly』最新号の特集は「海の幻視」! 海洋怪奇幻想小説やコラム評論、インタビューなどが一冊にびっしりと詰め合わされています。

 自分はピート・ローリック(Pete(r) Rawlick)の“Operation Starfish”という短篇の翻訳を担当しました。時は米ソ冷戦最盛期の1962年7月9日、ハワイ諸島の南に浮かぶジョンストン島という米領の孤島でStarfish Primeと呼ばれる核ミサイル発射実験が行われています。この史実に、当時のソ連指導者フルシチョフニクソン副大統領に発したとされる「クズキナの母を見せつけてやる!」という謎めいた罵倒表現をからめ、さらにラヴクラフトの作品世界に登場する人物や機械装置も出演させることで、ゴジラシリーズの怪獣映画にあるような緊迫感とスケール感を醸し出した作者の力業が光る短篇です。

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 ラヴクラフト作品から登場するのは、ウィンゲート・ピースリー(1900~1980)。「時間からの影」(「超時間の影」)の語り手ナサニエル・ウィンゲート・ピースリーの息子で、同作でもミスカトニック大心理学教授として父のオーストラリア調査行に同行する人物です。彼はブライアン・ラムレイの〈タイタス・クロウ〉シリーズでも重要な脇役になっているのですが、学識豊かで礼儀正しい老紳士という同シリーズでの描かれ方とはまた違って、本作ではterrible old manというあだ名そのままの偏屈な老人という人物設定になっています。

 ピート・ローリックの短篇はVol.11の「彼女が遺したもの」、Vol.12の「音符の間の空白」に続いて同誌で3回目の登場となります。家族の情愛をしっとりと描くこれまでの2作とはちがってガチの怪獣小説という趣で、正直固い部分もあるのですが、史実とラヴクラフト作品、クトゥルー神話諸作品を巧みにリンクさせてひとつの設定を破綻なく成立させているのはさすがです。きっとどこかで読んだり耳にしたりしたものがいろいろと出てきますので、そのあたりの元ネタ探しも楽しいものです。

 

 ところで今回、岡和田晃さんが映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズがらみの評論コラムをお書きになっていて、ちょっと驚きました。自分も映画館に通ったシリーズですが、一見ハリウッドの商業主義とご都合主義の権化のようにも思える同シリーズの制作の背景に、ティム・パワーズの海賊小説『幻影の航海』をはじめとする諸作品の影響があったのだとは! たいへん読み応えのあるコラムでした。

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 また、前述の〈タイタス・クロウ〉シリーズを翻訳された夏来健次さんのインタビューが巻頭カラーで掲載されていて、興味深く拝読しました。SF翻訳家の佐藤龍雄さんが夏来さんの別名義だとは自分も知らなかった!

 

 

ナイトランド・クォータリーvol.15 海の幻視

ナイトランド・クォータリーvol.15 海の幻視

 

 

 

 

 

タイタス・クロウの帰還―タイタス・クロウ・サーガ (創元推理文庫)

タイタス・クロウの帰還―タイタス・クロウ・サーガ (創元推理文庫)